ドラマで見られる原作ネタ

ドラマで使われている原作ネタを発見するのはそのドラマを見る上での楽しみの一つであるが、それは孤独のグルメについても同様で、これまで原作ネタが至る所で散見されているのでそれらをまとめてみた。

第1話「江東区 門前仲町のやきとりと焼きめし」

「俺も店を1軒くらい開いてみてもいいかと思って…」

元ネタ「小さな店なら郊外に一軒ぐらい開いてみるのもいいと思って…」
− 第2話「東京都武蔵野市吉祥寺の廻転寿司」より

個人の輸入貿易商という一般ではあまり馴染みの無い商売を序盤で視聴者に知らしめる意図的なセリフです。

「結婚同様 店なんかヘタにもつと守るものが増えそうで人生が重たくなる 男は基本的に体ひとつでいたい」

(元ネタも同セリフ)
− 第2話「東京都武蔵野市吉祥寺の廻転寿司」より

孤独を好む一匹狼的なスタンスだというのが良く分かります。上のセリフと合わせて五郎のキャラクターを印象付ける役割を果たしています。

第2話「豊島区 駒込の煮魚定食」

「腹もちょいとペコちゃんだし」

元ネタ「腹もペコちゃんだし」
− 第15話「東京都内某所の深夜コンビニ・フーズ」より

一見ダンディで真面目そうな雰囲気を醸し出していてもこんなセリフを吐くと台無しです。オヤジ認定されます。原作では「コバラベリー」という派生系も存在します。

「何だか大変なことになってきちゃったぞ。」

元ネタ「何だか凄いことになっちゃったぞ」
− 第15話「東京都内某所の深夜コンビニ・フーズ」より

ドラマでは将棋のシーンでこのセリフが登場しますが、あまりの弱さに周りが加勢気味に咳払いでアドバイスする事態を指して言っています。このセリフを吐く時は大抵の原因は自分にあります。

「焦るんじゃない。俺は腹が減っているだけなんだ」

(元ネタも同セリフ)
− 第1話「東京都台東区山谷のぶた肉いためライス」より

空腹感で切羽詰った状況になるとこのセリフが飛び出します。切羽詰ってる割になかなか決められないという優柔不断なところが五郎らしさです。

食後のタバコシーン

原作では最後タバコを吸うシーンで締められることが多いのですが、五郎にとってはタバコも食事の延長なのでしょう。
新幹線の時は食後のタバコも後ろの客から止められ最後まで歯車がずれっぱなしでした。
昨今の禁煙ムードでドラマでの喫煙シーンも自重気味になっていますがここではそのタブーを平然と破っています。

第3話「豊島区 池袋の汁なし坦々麺」

「しまった汁なし坦々麺とダブってしまった」

元ネタ「ぶた肉ととん汁でぶたがダブってしまった」
− 第1話「東京都台東区山谷のぶた肉いためライス」より

原作では既に定番になったダブりネタです。サイドメニューで注文したバンサンスーの豆腐が実は麺状だったのを受けてこのセリフが飛び出します。

第4話「千葉県 浦安市静岡おでん

小雪登場

結婚式場の仕事の帰りからの流れで小雪との回想に入ってきます。舞台は思い出のパリです。マンションだらけですがパリです。

「落ち着け、俺は腹が減っているだけなんだ」

元ネタ「焦るんじゃない。俺は腹が減っているだけなんだ」
− 第1話「東京都台東区山谷のぶた肉いためライス」より

第2話の時同様焦りまくってます。

「この前静岡に行った時に食べられなかった静岡おでんと新浦安でお目にかかれるとは」

原作の汁おでんの話と繋がっています。原作ではいわゆる普通の静岡おでんを期待したのに、汁おでんという店独自のものしかなくて「余計なことする店」と最初は文句を垂れていたものの予想に反し最後は大満足と締められていたはずですが、心の奥底ではわだかまっていたのでしょう。

第5話「杉並区 永福の親子丼と焼きうどん」

「釣堀そういうのもありだな」

元ネタ「持ち帰り!そういうのもあるのか」
− 第1話「東京都台東区山谷のぶた肉いためライス」より

この回はなかなか元ネタっぽいのを見つけられなかったのですが、辛うじて見つけたのがこれ。「そういうのもあり」はいくつかの候補がある時に通常使われますが、知人との約束を反故にされた五郎は釣堀しか選択肢がありませんでした。

第6話「中野区 鷺宮のロースにんにく焼き」

「ドスンと入れていくか」

元ネタ「焼肉でも入れていくか」
− 第8話「京浜工業地帯を経て川崎セメント通りの焼き肉」より

原作者の久住氏は食べるという動作をいくつかの言葉で使い分けたりします。
「食の軍師」では本郷と力石が以下のような会話を交わしたりしてます。
『「弁当をつかう」いいフレーズ知ってらぁ』
『「煙草をのむ」とかな』
『いいねぇ「蕎麦をたぐる」とか』

五郎が「入れる」と使う時はどこか決意めいたものを感じます。これから大食いするぞと。それも肉を。魚や野菜だとちょっと違う気がします。

「うんいいじゃないか」

元ネタ「ほーいいじゃないか」
− 第12話「東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ」より

ドラマも原作も「これでいいんだよ」とか「悪くないぞ」などこの手のセリフが頻繁に出てきますが見る側には何の説明にもなっていません。まさに自分だけの世界。孤独のグルメです。

「いるよねえ飲めそうで飲めない人」

元ネタ「いるんやこーゆー人な いかにも飲みそうで飲まない人」
− 第7話「大阪府大阪市北区中津のたこ焼き」より

ドラマでも酒が飲めない設定は受け継がれていますが、この前にある回想シーンでもバーで男二人が大人の会話を繰り広げる渋いシーンなのにグラスの中身はジュースでしかも乾き物をひたすらポリポリ食べています。思わずリスかよ!と突っ込みたくなります。


第7話「武蔵野市 吉祥寺 喫茶店ナポリタン」

「たっぷりソースのハンバーグは男のコの味だよ」

元ネタ「ソースの味って男のコだよな」
− 第17話「東京都千代田区秋葉原カツサンド」より

ソース=男のコをやたらと定式化したがる五郎ですが、何故なのかは謎です。推測するにどこか駄菓子屋的なもの(ソースせんべいとかもんじゃ焼きとか)をイメージしているのかと思いますが本人は説明してくれないので真相は闇のままです。


第8話「神奈川県 川崎市 八丁啜の一人焼肉」

原作第8話「京浜工業地帯を経て川崎セメント通りの焼肉」との共通点

この回は川崎の焼肉で原作でも同様の話があったなあと思っていたら案の定それからのセリフが多数でした。

「まるで巨人の内臓がむきだしになっているようだ」
「いかにも肉って肉だ」
「まるで俺の体は製鉄所 胃はその溶鉱炉のようだ」
うおォン 俺はまるで人間火力発電所だ」
「すいませーんライスもう一つ下さい」
「いかん いくらなんでも食いすぎだ」

ドラマ版うおォンを聴く
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また原作に類似した場面・セリフとして以下のようなものがありました
「やっぱり焼肉には白いご飯だよなあ」
→原作ではなかなか来ないで愚痴を垂れていましたが、今回は肉と一緒にすぐきました。
「一人焼肉って何だか忙しいな」
→原作の「何だか一人で黙って焼肉を食ってると次から次と休む間がない感じで忙しいな」と類似
野菜を焦がす
→ドラマでは焦げたまま食し「失敗の味はほろ苦い」
「いいキムチだ」
→原作は「いい味でてる いい感じだ」


第9話「世田谷区 下北沢の広島風お好み焼き」
この回は原作ネタは全くと言っていいほど見当たりませんでした。
かなり強引な見方をすれば辛うじてたこ焼きという共通点がありますが、食べかけのたこ焼きを人に押し付けてから一人でお好み焼き屋に行ってしまうのはさすがにどうでしょう。
ストーリーも従来のパターンとは異なっており色々な意味で風変わりな回でした。


第10話「豊島区 東長崎のしょうが焼目玉丼」

「肉じゃがとポテトサラダ いもがダブってる」

元ネタ「ぶた肉ととん汁でぶたがダブってしまった」
− 第1話「東京都台東区山谷のぶた肉いためライス」より
ダブりネタはもう一度くらいあるのではと踏んでいましたが予想通りでした。ダブりに気付いた時には少しだけ後悔しますが食べ始めるとすっかり忘れています。

「こういうのでいいんだよ」

(元ネタも同じ)
− 第12話「東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ」より
これも五郎お得意の一人合点系のセリフのうちの一つです。汎用性があるので類似のセリフはドラマ中何度か使われています。


第11話「文京区根津 飲み屋さんの特辛カレー」

アームロック

孤独のグルメ=アームロックと言っても過言で無いほどに既に切っても切れない関係の両者であるものの、正直ドラマでアームロックは無いよなあと半分諦めてましたがファンの期待に応えてしっかりやってくれました。
さすがに店主に対してではなく酔っ払い客相手であり、状況的には初代アームロックのハンバーグランチというよりお茶漬けの回の話に近いものでした。
ちなみにアームロックの犠牲者となった酔っ払い役はモト冬樹でした。この回はその他に店の女将役に美保純、古い知人役に小沢真珠と今までの低予算っぽさとは裏腹に豪華ゲスト陣が登場。アームロックネタといい最終回を前に一花咲かせるべく派手な演出が光る回でした。

第12話「目黒区中目黒 ソーキそばとアグー豚の天然塩焼き」

「滝山さんに紹介していただいた井之頭と申しますが」

グルメと全く無関係なセリフですが、これにピンと来た人はなかなかのマニアです。
滝山は原作の新幹線の回で五郎にシュウマイを薦めた人物と同姓なのです。
同一人物かどうかは分かりませんが、ドラマ製作者は我々を試そうと意図的にこの名を使ったのでないかと勘繰る自分は少し毒され過ぎな気もします。

「腹がぺこちゃんだ」

元ネタ「腹もペコちゃんだし」
− 第15話「東京都内某所の深夜コンビニ・フーズ」より
第2話に引き続き最後にもう一度登場。ドラマ五郎がこのセリフを吐いても違和感なくしっくりくるようになったのはドラマに慣れすぎたせいでしょうか。



孤独のグルメ 【新装版】

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